デフレ脱却、物価上昇……何年にも渡って、中央銀行である日銀が掲げているこの目標。これに、足元でちょっとした変化がありました。
簡単に言うと、これまで「早く達成したいんだ!」と意気込んでいた物価上昇を、「けっこう難しいとわかったから、もう急がない。でも、長期戦でじっくり取り組む!」という姿勢に変えた、ということ。
つまり、「物価上げるぞ!」という根本は変わりません。
簡単ではないながらも、長いスパンで見れば上がっていく可能性がある物価。それが現実のものとなるのなら、私達もうかうかしていられません。
来たる物価の上昇に備え、現状の理解と対策、していますか? まずは現状について、経済キャスターを務める筆者とちょっとみてみましょう。
■日銀が狙う物価上昇、それってどうして必要なの!?
9月21日の日銀による金融政策決定会合では、新たな金融政策の枠組みが決定。
長期金利をコントロールすることなどが発表されたのと同時に、これまで早期達成を目標としていた2%の物価安定の目標について、長い目で見守る姿勢を示しました。
理由はひとえに、日銀が上がってほしいと思っている物価が、なかなか上がらないから。
日銀はこれまでにも金融緩和や市中銀行に対するマイナス金利の導入などを通じて物価上昇を目指してきたものの、原油の下落など世界情勢にも影響され、足元の物価はなかなか上がりませんでした。
そんななかで日銀は、腰を据え、長期戦に切りかえることにしたというわけです。
でも消費者である私たちからしたら、「なぜそこまで躍起になって物価を上げたいの!?」と思ってしまいませんか?
■モノは安い方がいいけれど……じつは多くの人が予想している、「5年後の物価は上がっている」
物価が安い方が私達の負担が少なく済む。物価を無理に上げてもらわなくても、別にいいんですけど!? 市民感情としては、つい抱いてしまうこんなモヤモヤ。
実際、日銀が今年6月に行ったアンケート調査では、全体の8割超の人が「物価上昇はどちらかと言えば困ったことだ」と答えています。
その一方で、物価上昇の見通しに関する質問には、「1年後の物価はかなり上がっているだろう」と答えた人は僅かに6.7%だったものの、5年後に関しては23.1%の人が「かなり上がっているだろう」と回答。「少し上がっているだろう」という答えと合わせると8割超の人が将来的な物価上昇を予想していることになります。
では物価の上昇って、私たちにとって本当にデメリットなのでしょうか?
■物価の上昇は、私たちにとってメリットもあった!
物価の下落は消費者目線ではメリットがあっても、生産者目線ではデメリットになります。何かの手段でお金を稼がなければいけない私たちは“消費者であり、生産者でもある”。物価の下落=デフレが問題だとされるのは、こういう背景があるからです。
物価が上がって“消費者”の私たちは困っても、その恩恵がお給料という形でかえってくれば、“生産者”の面を持つ私たちには恩恵がある。
社会構造全体から見れば、“物価の上昇→企業収益アップ→働く人のお給料アップ→社会全体が潤う”という図が理想的。それが行き過ぎた例が、いわゆる“バブルの時代”ですか、そうならない目標が2%というわけです。
この先ジリジリと上がるかもしれない物価、あなたはどんな対策をしますか?
以上、“デフレ脱却後の私達のおカネ事情”についてでしたが、いかがでしょうか?
じゃあ、物価が上がる時にはお給料も上がっているわけね! と思いたいところですが、そう簡単にもいかず。順調にお給料に反映されるには時間がかかると思っていた方がいいでしょう。
そんな中で物価上昇に備えるために、いま自分にできることは何か。今から対策を考えておくのが、ベターかもしれません。